自分の端末から相手のIDとパスワードを入力してログインする行為は、不正アクセス禁止法第3条に該当し得ます。罰則は第11条により3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。
これは、この法律が定める罰則のなかで最も重いものです。
同じ「相手の情報を見る」でも、端末を直接操作する場合とは扱う条文が変わります。その違いを、条文の要件から説明します。
第3条が見ている3つの要件
第3条が禁じている不正アクセス行為は、次の要件で組み立てられています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 経路 | 電気通信回線を通じて行われること |
| 手段 | 他人の識別符号(ID・パスワード等)を入力すること |
| 結果 | アクセス制御機能による利用の制限を解除し、制限されている利用ができる状態にすること |
自分のスマートフォンやパソコンから相手のアカウントにログインする行為は、この3つをすべて満たします。
自宅の同じWi-Fiを使っていても、回線を通じていることに変わりはありません。
目的要件がない点が、他の条文と違う
ここが、この記事で最も押さえてほしいところです。
同じ法律のなかでも、条文によって要件が違います。
- 第4条(識別符号の取得)・第6条(不正に取得された識別符号の保管) — いずれも「不正アクセス行為の用に供する目的で」という要件がある
- 第3条(不正アクセス行為そのもの) — この目的要件が置かれていない
つまり、パスワードを控えている段階では目的が問われるのに、実際にログインした段階では問われないという構造になっています。
「浮気を確かめたかっただけで、悪用するつもりはなかった」という説明は、第3条の場面では効きにくくなります。
承諾があったかどうかは、いつの話か
第3条は、アクセス管理者本人や、その承諾を得た場合を除くと定めています。
そこで問題になるのが、承諾がいつまで続いていたかです。
以前パスワードを教えてもらっていた、という状況はよくあります。ただ、そのときに相手が想定していたのは、たとえば手続きの代行や、共有した写真を見ることでした。
疑いを持って中身を確かめる目的は、そのときの想定に含まれていません。
過去に共有していた事実は、いま見に行くことの承諾にはなりません。
ログインを避けても、記録は残る
もう1つ、実務上の問題があります。
多くのサービスは、新しい端末からのログインを本人に通知します。 見慣れない場所からアクセスがあった、という通知が相手の端末に届く形です。
さらに、ログイン履歴として日時と端末の情報が残るサービスもあります。
つまり、気づかれないつもりで行った操作が、記録として残ったうえで相手に通知されることがあります。
相手が「勝手にログインされた」と主張したとき、その履歴が裏づけになります。
すでにログインしてしまった場合
まず、追加でログインしないでください。 回数が増えるほど記録が積み上がります。
そのうえで、見つけた内容を相手に見せる前に弁護士に相談してください。相手に提示した時点で、入手の経緯を説明する必要が生じます。
確かめたいことが残っているのであれば、届出のある事業者に依頼した場合に何ができるのかを、先に確認しておくほうが安全です。契約前に確かめられることから見ていくと、聞くべきことが決まります。
よくある質問
以前パスワードを教えてもらっていました。それでも問題になりますか。
教えてもらった事実は、いつまで承諾が続いていたかとは別の問題です。共有していた当時と、疑いを持って見に行った時点とでは、相手が想定していた使い方が違うためです。承諾の範囲を超えていたと判断される可能性があります。過去に共有していたことだけを根拠に安全だと考えないでください。
相手が自分の端末にログインしたままにしていた場合は。
すでにログインされた状態の画面を見る行為は、識別符号を入力する行為ではないため、第3条の要件からは外れます。ただし、その端末を勝手に操作したこと自体は、離婚や慰謝料の話し合いで持ち出され得ます。条文に当たらないことと、問題にならないことは別だと考えてください。
共有アカウントの場合はどうですか。
家族向けのプランなどで、双方が利用者として登録されている場合は、利用権者としてのアクセスに当たり得ます。一方、名義は一方だけで、便宜的にパスワードを共有していただけの場合は、扱いが変わり得ます。契約上どうなっているかを確認したうえで、弁護士にご相談ください。
ログインして見つけた内容は証拠として使えますか。
入手の経緯が問われる場面があります。相手側から、どうやって入手したのかを指摘される形です。加えて、その記録が誰とどういう関係にあったかを示せるかどうかは、内容によります。使うかどうかを自分で判断せず、弁護士に相談してください。
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法律上の注意
ログインの手順や、履歴を残さない方法は掲載していません。この記事が扱うのは、その行為がどの条文に触れるおそれがあるかだけです。すでに行ってしまった場合の対応も含め、判断は弁護士にご確認ください。