アプリの履歴が示せるのは、利用していた事実とやり取りの内容までです。
そして、この種の記録には固有の弱点があります。消せることです。
紙の書類や、物として存在する記録と違い、アプリの中身は相手の操作ひとつで無くなります。この前提で考える必要があります。
消えるまでの流れ
実際には、次の順で起こります。
- あなたが見たことに、相手が気づく
- やり取りが削除される
- アプリがアンインストールされる
- 退会してアカウントごと消える
4段目まで進むと、アプリ上の記録は残りません。
しかも、この流れは問い詰めた直後に起きます。 確かめたい気持ちで相手に見せた結果、記録が消えるという形です。
したがって、見つけた段階で相手に見せないことが、そのまま記録を守ることになります。
消えても残るもの
一方で、アプリの外に残るものがあります。
| 残る場所 | 何が分かるか |
|---|---|
| クレジットカードの明細 | 課金した日付と金額 |
| アプリストアの請求履歴 | 同上 |
| 家計の引き落とし記録 | 継続的に課金していた期間 |
課金の記録は、家計側に残ります。 相手がアプリを消しても、こちらの家計簿や明細からは消えません。
これは、利用していた時期を示す手がかりになります。
ただし、すでに手元にあるものを見ることと、新たに取得しに行くことは分けて考えてください。 相手名義の明細を取り寄せる行為は、別の問題を生みます。
取得の方法で扱いが変わる
内容とは別に、どうやって手に入れたかが問われる場面があります。
目の前の端末を操作して見た場合と、自分の端末から相手のアカウントにログインした場合では、扱う法律が変わります。
後者は不正アクセス禁止法第3条に該当し得ます。罰則は第11条により3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。
同じ画面を見ていても、どこから見たかで変わります。 詳しくはアカウントにログインする場合で扱っています。
履歴だけでは届かない部分
やり取りの内容が親密であっても、示せる範囲には限りがあります。
民法第770条第1項第1号が挙げているのは「不貞な行為」であり、条文に定義はありません。
やり取りの文面から、会っていたかどうかまでは読み取れません。
そのため、履歴は単独で戦う材料というより、他の記録を意味づける材料になります。約束した日時があれば、その日時の行動と結び付けられる、という形です。
この構造はLINEのやり取りだけで足りるのかと同じです。
運営会社に問い合わせる場合
「アプリの会社に聞けば分かるのでは」と考える人がいます。
個人が問い合わせて開示されることは、通常ありません。
一方、弁護士に依頼したうえで、弁護士法第23条の2にもとづく弁護士会照会という制度を使える場合があります。
弁護士会が必要性と相当性を審査したうえで、弁護士会会長名で照会し、照会先には原則として回答義務があります。依頼者が直接使える制度ではありません。
詳しくは探偵以外に頼めるのかで扱っています。
いま手元にある場合
やるべきことは3つです。
- 手を加えない — 撮り直し、切り出し、明るさの調整をしない
- 相手に見せない — 見せた時点で消される
- 課金の記録を確認する — 家計側に残っているものを見る
3番目は、アプリが消えた後でもできます。 先に急ぐ必要はありません。
そのうえで、会っていたかどうかまで確かめる必要があるなら、外から確認する方法に切り替える段階になります。費用の目安はこちらの記事で確認できます。
よくある質問
スクリーンショットを撮っておけば大丈夫ですか。
手元に残るという意味ではそうですが、撮り方によって説明の求められ方が変わります。加工していないことを説明できる状態にしておいてください。撮り直しや必要な部分だけの切り出しは避けてください。
相手が退会したら、もう分かりませんか。
アプリ上の記録は消えます。ただし、課金の記録は家計側に残ることがあります。クレジットカードの明細やアプリストアの請求履歴から、利用していた時期を示せる場合があります。
アプリの運営会社に問い合わせれば教えてもらえますか。
個人が問い合わせて開示されることは通常ありません。弁護士に依頼したうえで、弁護士法第23条の2にもとづく弁護士会照会という制度を使える場合があります。弁護士会が必要性と相当性を審査したうえで照会する仕組みです。
履歴だけで慰謝料を請求できますか。
履歴が示せるのは、利用の事実とやり取りの内容までです。実際に会っていたかどうかは別に示す必要があります。請求できるかどうかの見通しは弁護士にご確認ください。
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法律上の注意
アプリの履歴を取得・復元する方法は掲載していません。この記事が扱うのは、手元にある記録が何を示せるかだけです。相手に見せる前に弁護士へご相談ください。