相手の勤務先や家族に伝えてよいか|真実でも名誉毀損は成立し得ます

カテゴリ: 法律と探偵業法

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目次
  1. 「その事実の有無にかかわらず」の意味
  2. 例外の要件は2つある
  3. 業務妨害という別の条文
  4. 依頼者側の書面との関係
  5. では、どうすればよいか
  6. 伝えたくなる気持ちについて

真実であっても、名誉毀損は成立し得ます。

これは解釈の話ではなく、条文にそう書かれています。

刑法第230条第1項です。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

「本当のことを言っただけ」は、それ自体では説明になりません。この記事は、その理由と例外を扱います。

「その事実の有無にかかわらず」の意味

多くの人が驚く部分です。

嘘を広めた場合だけが対象なのではありません。事実を告げた場合も、条文の文言に含まれています。

この条文が守ろうとしているのは、事実かどうかとは別に、その人の社会的な評価そのものだと説明されます。

したがって、証拠がそろっているほど摘示した事実の裏付けは強くなりますが、それは第230条の成否とは別の話になります。

例外の要件は2つある

免責を定める条文があります。第230条の2第1項です。

前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

要件が2つ重なっています。

  1. 公共の利害に関する事実であること
  2. 目的が専ら公益を図ることにあったと認められること

私的な関係についての事実は、通常1番目に当たりません。

そして2番目は「専ら」と書かれています。相手に打撃を与えたい、思い知らせたいという気持ちが含まれていれば、この要件は満たしにくくなります。

業務妨害という別の条文

勤務先に連絡する場面では、もう1つ関わり得る条文があります。

第233条です。

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

繰り返し連絡する、勤務中に押しかけるといった行為が問題になり得ます。

伝える内容が事実であっても、伝え方によっては別の条文に関わる、という構造です。

伝える前に何ができるか相談する

依頼者側の書面との関係

調査を依頼している場合、もう1つ関わる条文があります。

探偵業法第7条により、依頼者は次の内容の書面を交付することになっています。

当該探偵業務に係る調査の結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面

調査で分かった勤務先の情報を、相手に打撃を与えるために使えば、この書面の内容に反します。

調査そのものが適法でも、結果の使い方は別に評価されます。

では、どうすればよいか

相手方に何かを求めたい場合、手続きに乗せることになります。

慰謝料の請求は弁護士の業務です。相手方の氏名や住所が分からない場合、弁護士法第23条の2にもとづく弁護士会照会という制度があります。

弁護士会が必要性と相当性を審査したうえで、弁護士会会長名で照会し、照会先には原則として回答義務があります。

この経路であれば、自分で勤務先に連絡する必要がありません。

詳しくは探偵以外に頼めるのかで扱っています。

伝えたくなる気持ちについて

事実が分かった直後は、相手や周囲に知らせたくなります。

ただ、その行動によって、あなたの立場が変わります。

それまで請求する側だったのが、責任を問われ得る側になる。話し合いの場で、こちらの落ち度として持ち出される。

確かめた事実は、伝えなくても失われません。 一方、伝えた事実は取り消せません。

行動する前に、弁護士へ相談してください。相談だけであれば、その日のうちにできます。

よくある質問

本当のことなのに、なぜ問題になるのですか。

刑法第230条第1項が「その事実の有無にかかわらず」と定めているためです。この条文が守ろうとしているのは、事実かどうかとは別に、社会的な評価そのものだと説明されます。真実であることは、それ自体では抗弁になりません。

SNSに書くのはどうですか。

公然と事実を摘示する行為に当たり得ます。不特定または多数の人が見られる状態が「公然」に当たると説明されており、投稿はこれに近い形です。削除しても、その前に見た人がいた事実は残ります。

相手の配偶者に伝えるのは。

1人に伝える行為が「公然」に当たるかは事案によって判断されます。ただし、伝えた相手からさらに広がる可能性もあります。目的が何かによっても評価が変わるため、行動する前に弁護士に相談してください。

慰謝料を請求するには相手方の情報が必要では。

必要になる場面はあります。ただし、それは弁護士を通じた手続きの中で扱われるもので、自分で勤務先に連絡することとは別です。弁護士法第23条の2にもとづく弁護士会照会という制度もあります。

法律上の注意

この記事は条文の説明であり、ご自身のケースについての判断ではありません。伝えるかどうかを検討している場合は、行動する前に弁護士へご相談ください。

相談だけでも大丈夫。契約前に書面での説明があります

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