尾行と張込みは、探偵業法が探偵業務として定義している行為です。それでも、個人が行う場合はストーカー規制法の「つきまとい等」に該当し得ます。
同じ行為なのに扱いが違うのは、条文が「誰が、どういう立場で行うか」を見ているためです。
この記事では、その構造を条文から説明したうえで、法律とは別の理由で成果につながりにくい点にも触れます。
条文に「見張り」が書かれている
ストーカー規制法第2条第1項第1号は、つきまとい等として次の行為を挙げています。
つきまとい、待ち伏せ、進路妨害、見張り、押し掛け、うろつくこと。
「見張り」と「うろつく」が明示されている点に注目してください。
相手の職場の近くで出てくるのを待つ、自宅の前に車を停めて様子を見る。こうした行為は、条文が挙げている類型にそのまま重なります。
第3条は、これらの行為をして相手方に不安を覚えさせてはならないと定めており、ストーカー行為に当たる場合の罰則は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。
ただし、目的要件がある
第2条第1項の柱書には、次の要件が置かれています。
恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的
配偶者の行動を確かめたいという動機がこれに当たるかどうかは、事情によって変わります。
当たらない可能性があることは、安心してよい理由になりません。
判断の主導権は、相手が警察に相談した時点で、あなたの手を離れるためです。
届出のある事業者との違いはどこにあるか
探偵業法第2条は、探偵業務を次のように定義しています。
面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務
そのうえで第4条が、営業所ごとに都道府県公安委員会への届出を求めています。
つまり、行為そのものを禁じるのではなく、業として行う者を把握する仕組みが置かれています。
| 個人が行う場合 | 届出をした事業者が行う場合 | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 条文が挙げる類型に重なり得る | 探偵業法が定義する探偵業務 |
| 手続き | なし | 届出、契約前の書面交付(第8条) |
| 秘密の扱い | 定めなし | 第10条により秘密保持の義務 |
| 気づかれた場合 | 相手が警察に相談し得る | 業務として説明できる |
法律とは別に、成果につながりにくい理由
ここからは、条文の話ではありません。
あなたは、相手に顔を知られています。 これが、素人の尾行が続かない最大の理由です。
一度気づかれると、相手は行動を変えます。会う場所を変え、連絡手段を変え、時間帯を変えます。
その結果、以降は同じ方法では確かめられなくなります。 法的な問題を抱えたうえに、知りたかったことも分からないまま残る、という形になります。
加えて、平日の日中に相手の行動に合わせて動き続けることは、仕事や家庭がある状態では現実的に難しくなります。
いま追いかけたくなっている場合
気持ちとしては、いますぐ確かめたいはずです。
ただ、尾行は一度きりの手段になりやすいという点だけは、動く前に知っておいてください。失敗したときに失うのは、その日の時間ではなく、その後の確認の機会です。
契約前に何を確認できるのかを先に見ておくと、依頼するかどうかを落ち着いて決められます。届出の確かめ方と書面の項目から読んでください。
よくある質問
自分の配偶者を追うだけでも、つきまといになりますか。
第2条第1項の柱書には、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的という要件があります。この要件を満たすかどうかは事情によって変わるため、必ず当たるとも当たらないとも言えません。ただし、その判断をするのは相手が警察に相談した後の話になります。
尾行中に写真を撮るのは問題ありませんか。
公道から見える範囲を撮影する行為と、敷地に立ち入って撮影する行為は別に扱われます。後者は刑法第130条の住居侵入が問題になり得ます。また、撮影した場所や角度によっては、撮影行為そのものが別の規制に触れる可能性があります。
友人に頼んで見てもらうのはどうですか。
報酬を受けて他人の依頼で行動を調査する場合、探偵業法上の届出が必要な業務にあたる可能性があります。無届で営業した場合の罰則は6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です。頼まれた側に負担を負わせる形になるため、この方法は勧められません。
気づかれた場合、何が起きますか。
相手が警察に相談した場合、警告や禁止命令の手続きの対象になり得ます。それとは別に、相手が行動を変えるため、以降は同じ方法で確かめられなくなります。法的な問題と、確認できなくなる問題が同時に起きると考えてください。
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尾行の方法や気づかれないための工夫は掲載していません。この記事が扱うのは、その行為がどの条文に触れるおそれがあるかと、なぜ成果につながりにくいかだけです。判断は弁護士にご確認ください。