回数の基準は、条文に書かれていません。
民法第770条第1項第1号が定めているのは「配偶者に不貞な行為があったとき」であり、何回以上という要件は置かれていません。
したがって、1回だから当たらない、という条文上の根拠はありません。
それでも「何回必要か」という問いが繰り返し出てくるのには、理由があります。この記事はそこを説明します。
回数が問われているように見える理由
問われているのは回数ではなく、別の説明を排除できるかです。
記録が1点しかない場合、相手には説明の余地が残ります。仕事だった、たまたまだった、その日限りの事情だった。
複数の日にわたる記録は、この説明を立てにくくします。
その結果、外から見ると「回数が多いほど有利」に見えます。しかし効いているのは回数そのものではなく、説明の余地が狭まったことです。
この違いは、実際の場面で効いてきます。同じ日に同じ場面を何度撮っても余地は狭まりませんが、日を変えた記録は狭めます。
「1回だけ」と相手が言っている場合
相談として多いのがこの状況です。
ここで注意してほしいのは、その説明がいつまで続くか分からないことです。
話し合いが金額の段階に進むと、説明が変わることがあります。「1回だけだった」が「そもそも関係はなかった」に変わる形です。
認めている状態が続いている間に、その内容を後から確認できる形にしておけるかどうか。これは弁護士に相談する事柄です。
回数の話が、そのまま結論にならない条文
もう1つ押さえておきたい点があります。
第770条第2項は、第1号の事由がある場合であっても、裁判所が一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができると定めています。
つまり、事由に当たることと、離婚が認められることは別です。
回数を積み上げることが、そのまま結論に直結するわけではありません。
数える発想から、狭める発想へ
実務的に役立つ切り替えがあります。
「何回集めればよいか」ではなく、**「相手のどの説明が残っているか」**で考える形です。
- 仕事だったという説明 → 時間帯と滞在の長さが残っているか
- 友人だったという説明 → 同じ組み合わせの反復があるか
- たまたまだったという説明 → 別の日の記録があるか
残っている説明の数だけ、足りない記録があります。
この形にすると、あといくつ必要なのかが自分で見えるようになります。回数の目安を探して検索を繰り返すより、早く進みます。
調査の区切り方にも関わる
依頼する場合、この考え方はそのまま費用に関わります。
回数で区切ると、いつ終わるのかが決まりません。説明の余地が狭まった時点が区切りになります。
契約前に交付される書面には、調査の期間と稼働時間が記載されます。どういう状態になったら終わりと考えているのかを、その場で確認してください。
書面で見る項目を先に把握しておくと、この確認がしやすくなります。
よくある質問
1回だけだと相手が認めています。それでも請求できますか。
民法第770条第1項第1号に回数の要件は置かれていないため、1回だから当たらないという条文上の根拠はありません。ただし、請求が認められるか、金額がどうなるかは別の話で、期間や経緯を含めた事情が考慮されます。見通しは弁護士にご確認ください。
相手が認めているなら、証拠は要りませんか。
認めている状態が続くとは限りません。話し合いが進んで金額の話になった段階で、説明が変わることがあります。認めている間に、その内容を書面など後から確認できる形にしておけるかを、弁護士に相談してください。
身体の関係がなければ不貞にはならないのですか。
条文は「不貞な行為」としか定めておらず、定義を置いていません。そのため、どこまでを含むかは裁判所の判断によります。なお、第1項第4号には「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という別の事由もあります。どの事由で組み立てるかは弁護士の判断領域です。
何回分の記録を集めれば依頼を終えられますか。
回数ではなく、別の説明を排除できる状態になったかどうかで判断されます。そのため、調査の終わりも回数では決まりません。契約前の書面には調査の期間や稼働時間が記載されるので、どこで区切るのかをその場で確認してください。
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法律上の注意
この記事は回数の基準を保証するものではありません。条文に何が書かれているかと、実際に何が問われるかを示すものです。ご自身のケースの見通しは弁護士にご確認ください。