車にGPS機器を取り付けると何に当たるのか|条文と目的要件

カテゴリ: 法律と探偵業法

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目次
  1. 令和3年の改正で規制対象になった
  2. 条文は「取り付ける」と「取得する」を分けている
  3. 「必ず違法」と書けない理由
  4. レンタルなら扱いが変わるのか
  5. 取り付けの過程で別の問題が起きる
  6. 見つかったときに起きること
  7. 届出のある業者に任せる場合との違い

相手の車にGPS機器を取り付けて位置情報を取得する行為は、ストーカー規制法第2条第3項が定める「位置情報無承諾取得等」に該当する可能性があります

「可能性があります」と書いているのは、条文に目的要件が置かれているためです。断定を避けているのではなく、条文がそう書かれています。

以下、何がいつ規制対象になったのか、条文は何をどう分けて書いているのかを見ていきます。

令和3年の改正で規制対象になった

警察庁の説明によれば、この規制が加わった背景は、元交際相手等の自動車にGPS機器をひそかに取り付け、その位置情報を取得する事案がみられたことでした。

改正法の施行日は令和3年8月26日です。

それ以前は、GPS機器を用いた位置情報の取得は、この法律の規制対象として明示されていませんでした。古い記事を読んでいると、この点で情報が更新されていないことがあります。

条文は「取り付ける」と「取得する」を分けている

第2条第3項は、位置情報無承諾取得等として次の行為を挙げています。

行為
第1号 承諾を得ないで、相手が所持する位置情報記録・送信装置により記録・送信される位置情報を取得すること
第2号 位置特定用識別情報送信装置の位置情報を取得すること
第3号 位置情報装置を、相手の所持する物に取り付けること

取り付ける行為(第3号)と、位置情報を取得する行為(第1号)が、別々に書かれている点が重要です。

取り付けただけで位置を見ていない、あるいは他人が取り付けた機器の情報を見ているだけ、といった切り分けをしても、条文はそれぞれを対象にしています。

第3条は、これらの行為をして相手方に不安を覚えさせてはならないと定めており、ストーカー行為に当たる場合の罰則は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。

「必ず違法」と書けない理由

第2条第1項の柱書には、次の目的要件が置かれています。

恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的

配偶者の行動を確かめたいという動機が、この要件に当てはまるかどうかは、事情によって変わります。

当てはまらない可能性があるからといって、安全だという意味にはなりません。

その判断をするのは、あなたでも、この記事でもないためです。相手が警察に相談した時点で、判断は相手と捜査機関の側に移ります。

レンタルなら扱いが変わるのか

機器を買わずに借りる形のサービスがあります。「買ったわけではないから」と考える人がいるので、条文に戻って確認します。

変わりません。

第2条第3項が挙げているのは、次の2つです。

  • 相手の所持する物に取り付けること(第3号)
  • 承諾を得ずに位置情報を取得すること(第1号)

どちらの条文にも、機器を所有しているかどうかという要件はありません。

買ったか、借りたか、もらったか、もともと家にあったか。条文はそこを見ていません。見ているのは、取り付けたかどうかと、承諾があったかどうかです。

したがって、レンタルであることは、行為の評価を変える材料になりません。

同じ理由で、次の考え方も成り立ちません。

よくある理解 条文から見ると
レンタルだから所有していない 所有の有無は要件にない
取り付けず、車内に置いただけ 承諾のない位置情報の取得は第1号が別に対象にしている
短期間だけ試した 期間の要件はない
位置は見ずに履歴だけ確認した 取得する行為が対象になっている

機器の入手方法や設置の仕方を工夫する方向で考えても、要件から外れません。

なお、探偵業者が自社の業務としてどのような機材を使うかは、これとは別の話です。依頼者本人が使う場合の話と混ざりやすいので、分けて考えてください。使う方法に疑問があれば、契約前の説明の場で確認できます。

自分で動く前に、調査できる内容か確かめる

取り付けの過程で別の問題が起きる

機器を固定するために車体に穴を開けた、内装を外して戻せなくなった、といった場合は、刑法第261条の器物損壊が別に問題になり得ます。法定刑は3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料です。

また、相手が単独で使用している駐車場や、別居中の相手の敷地に立ち入って取り付けた場合は、住居侵入の問題も重なります。

1つの行為が、複数の条文に同時に関わることがあるという点は、押さえておいてください。

見つかったときに起きること

ストーカー規制法には、警告と禁止命令という手続きが用意されています。

相手が警察に相談し、これらの手続きが取られた場合、その事実は記録として残ります。

そして、離婚や慰謝料の話し合いに進んだとき、相手側から持ち出される材料になります。 相手の不貞を確かめようとした行為が、あなたの側の落ち度として扱われる形です。

確かめたかっただけだという説明が通るかどうかは、そのときに判断されることになります。

届出のある業者に任せる場合との違い

探偵業法第2条が定義する探偵業務は、面接による聞込み・尾行・張込み・これらに類する方法による実地の調査です。

機器を相手の持ち物に取り付ける方法は、この定義に素直に収まりません。

どの方法で調べるのかは、探偵業法第8条により、契約前に交付される書面に記載されます。方法に納得できなければ、その時点で断ることができます。

車の位置を知りたいという発想から離れて、何を明らかにしたいのかを言葉にしてから相談すると、確認すべきことがはっきりします。

よくある質問

夫婦で共有している車ならどうですか。

共有しているかどうかで結論が決まるとは言えません。条文が見ているのは所有名義だけでなく、相手が所持する物に取り付けたか、承諾のない位置情報の取得があったかという点です。日常的にどちらが使っている車なのか、相手だけが使う時間帯を狙って取得していないか、といった事情が関わってきます。名義が共有だから問題ないという整理はできないと考えてください。

GPSのレンタルサービスを使うのは問題ありませんか。

機器を貸し出すこと自体が禁じられているわけではありません。問題になるのは使い方です。条文には機器を所有しているかどうかの要件がなく、相手の持ち物に取り付けたか、承諾なく位置情報を取得したかで判断されます。借りた機器でも、この点は変わりません。

相手に見つかった場合、どうなりますか。

相手が警察に相談した場合、警告や禁止命令といった手続きの対象になり得ます。禁止命令に違反してストーカー行為をした場合の罰則は2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金です。加えて、離婚や慰謝料の話し合いのなかで、あなたの行為が持ち出される可能性もあります。

探偵はGPSを使わないのですか。

探偵業法第2条が定義する探偵業務は、面接による聞込み・尾行・張込み・これらに類する方法による実地の調査です。機器を相手の持ち物に取り付けて位置情報を取得することは、この定義に素直に収まる方法ではありません。どの方法で調べるのかは、契約前に交付される書面の記載事項なので、その場で確認できます。

法律上の注意

取り付けの方法や機器の選び方は掲載していません。この記事が扱うのは、その行為がどの条文に触れるおそれがあるかだけです。ご自身のケースについての判断は弁護士にご確認ください。

相談だけでも大丈夫。契約前に書面での説明があります

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