条文には、アプリのことは書かれていません。
民法第770条第1項第1号が定めているのは「配偶者に不貞な行為があったとき」だけで、「不貞な行為」の定義も置かれていません。
そのため、「アプリを使っていたら不貞か」に条文から直接答えることはできません。
ただし、どう扱われ得るかまでは整理できます。この記事はそこを扱います。
段階を分けて考える
アプリをめぐる状況は、実際には複数の段階に分かれます。
| 段階 | 第1号(不貞な行為)での評価 |
|---|---|
| 登録している | 難しいとされる |
| やり取りをしている | 内容による |
| 実際に会った | 会った先で何があったかによる |
| 関係を持った | 第1号の枠組みに乗り得る |
多くの人が「アプリを見つけた」と言うとき、1段目か2段目です。
そして、そこから3段目・4段目に進んでいるかどうかは、アプリの画面からは分かりません。
もう1つの枠組み
第1号だけが選択肢ではありません。
第770条第1項第4号は、次のように定めています。
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
この事由で組み立てる形があり得ます。
不貞な行為として立証するのが難しい場合でも、婚姻関係の状態を全体として主張する道が残っている、という構造です。
どの事由で組み立てるかは、弁護士の判断領域です。 ここは自分で決めるところではありません。
「浮気の定義」を聞いている場合
検索の背景として多いのが、そもそも何をもって浮気とするかが分からないという状態です。
法律の枠組みと、夫婦の間の受け止め方は、別のものです。
- 法律 — 第770条の事由に当たるかどうか
- 夫婦の間 — 何をされたら受け入れられないか
後者に、条文は答えを持っていません。
アプリを使っていた事実だけで関係を続けられないと感じるなら、それは法律の判断とは別に成り立つ気持ちです。逆に、法律上は事由に当たり得ても、続けるという選択もあります。
条文が答えるのは、手続きに乗せた場合にどう扱われるかまでです。
見つけた後に気をつけること
アプリの存在に気づいた段階で、次の2つに注意してください。
1つ目。中を見る方法によって、扱う法律が変わります。
目の前の端末を操作して見る行為と、自分の端末からアカウントにログインする行為は別です。後者は不正アクセス禁止法第3条の問題になり得ます。罰則は3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。
詳しくはアカウントにログインする場合で扱っています。
2つ目。見たことに気づかれると、消されます。
アプリは、削除すれば端末上から消えます。問い詰めた直後に消される、という流れが起きやすい対象です。
手元に残る記録
アプリそのものが消えても、残るものがあります。
- 課金の記録 — クレジットカードの明細、アプリストアの請求履歴
- 家計の記録 — 引き落としの明細
これらは家計を管理していれば、すでに手元にあるものです。
利用していた時期を示す手がかりになります。ただし、すでにあるものを見ることと、新たに取得しに行くことは分けて考えてください。
進め方
アプリを見つけた段階でできることは、次の順です。
- 見たものに手を加えない(撮り直し・整理をしない)
- 問い詰める前に、どうしたいかを決める
- 第1号と第4号のどちらで組み立てられるかを弁護士に聞く
3番目を先に済ませると、確かめるべきことが変わります。 会っていたかどうかまで必要なのか、利用の事実で足りるのかが分かるためです。
問い詰めるかどうかの判断はこちらの記事で扱っています。
よくある質問
登録しているだけでも問題ではないのですか。
問題ないという意味ではありません。民法第770条第1項第1号の不貞な行為として評価しにくい、という話です。同項第4号の婚姻を継続し難い重大な事由として主張する形もあり得ます。どちらで組み立てるかは弁護士の判断領域です。
やり取りの内容が親密でした。
文面が示せるのは、連絡を取っていた事実とその内容までです。実際に会っていたかどうかは別に示す必要があります。この構造はメッセージ全般に共通します。LINEのやり取りの記事で詳しく扱っています。
相手のアプリを開いて中を見てもいいですか。
端末を直接操作して見る行為と、自分の端末からアカウントにログインする行為では、扱う法律が変わります。後者は不正アクセス禁止法第3条の問題になり得ます。すでに見てしまった場合の扱いも含めて、弁護士にご相談ください。
課金の記録は手がかりになりますか。
家計の記録に表れていれば、利用していた時期を示す手がかりになります。クレジットカードの明細やアプリストアの請求です。ただし、すでに手元にあるものを見ることと、新たに取得しに行くことは分けて考えてください。
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法律上の注意
この記事は条文の説明であり、ご自身のケースがどの事由に当たるかの判断ではありません。アプリの画面を取得する方法も掲載していません。判断は弁護士にご相談ください。