会話の録音そのものを一般的に禁じる法律は、見当たりません。問われるのは、その録音をするために何をしたかです。
そのため、同じ「録音」でも、自分がその場にいるかどうかで話がまったく変わります。
この記事では、その線を引きます。手元にある音声の扱いについては、相手に聞かせる前に弁護士にご相談ください。
自分が参加している会話の場合
自分が当事者として参加している会話を、相手に断らずに録音する。この形は、一般に問題になりにくいとされています。
理由は単純で、あなたはその会話をもともと聞いているからです。
聞いた内容を記憶にとどめるか、機械に残すかの違いにすぎない、という整理になります。
ただし、これは法律上の話です。録音していた事実を相手が知ったとき、関係に何が起きるかは別です。
自分がいない場に機器を置く場合
ここから扱いが変わります。
留守中の部屋、相手が単独で使っている車、相手の職場。こうした場所に録音機を置いてくる形です。
このとき問題になるのは、録音ではなくそこに立ち入ったことです。
刑法第130条は、次のように定めています。
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者
法定刑は3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金です。
注目してほしいのは、後段の「退去しなかった」です。 入る行為だけでなく、出ていくよう言われて留まる行為も対象になっています。別居中の自宅をめぐる場面で、この後段が効いてきます。
同居している自宅ならどうか
一緒に住んでいる家であれば、あなたにも居住の実態があります。そのため、住居侵入の問題は生じにくくなります。
ただし、別居が始まった時点で状況が変わります。
相手だけが住んでいる住まいに、鍵を持っているからといって入る行為は、第130条の対象になり得ます。もともと夫婦の住まいだったという事情は、いま誰が住んでいるかとは別に判断されます。
録音が残っても、決め手にならないことがある
法律の話とは別に、実際に多いのがこの問題です。
音声に残っているのは、その場で交わされた言葉です。
相手が後から「冗談だった」「別の話をしていた」と説明したとき、音声だけではそれを崩しきれないことがあります。
足りないのは長さや量ではなく、いつ・どこで・誰と、という周辺の情報です。
録音を重ねるほど確からしくなる、という関係にはなっていません。
すでに録音がある場合
手元に音声が残っているのであれば、加工しないでください。 聞きやすくするための編集や、必要な部分だけを切り出す作業で、記録としての性質が変わることがあります。
そして、相手に聞かせる前に弁護士に相談してください。聞かせた時点で、以降の確認が難しくなります。
何が足りていないのかを先に整理しておきたい場合は、手元の記録が使えるのかから確認してください。
よくある質問
相手に断らずに録音するのは、盗聴になりませんか。
自分が参加している会話を相手に断らず録音することは、一般に盗聴とは区別して語られます。盗聴として問題になりやすいのは、自分がいない場の会話を機器で拾う形です。ただし、断らずに録音した事実が相手との関係に与える影響は別の問題として残ります。
車の中に録音機を置くのはどうですか。
その車が誰の所有で、誰が日常的に使っているかによって事情が変わります。相手が単独で使っている車に立ち入って置いた場合は、住居侵入とは別に、器物損壊や、位置情報を伴う機器であればストーカー規制法の問題が重なる可能性があります。単独の行為が複数の条文に関わることがある、と考えてください。
録音した音声を相手に聞かせて問い詰めてもいいですか。
聞かせた時点で、相手は録音されていたことを知ります。以降は会話の内容が変わり、同じ方法では確かめられなくなります。加えて、どうやって録音したのかを問われる場面が生じます。手元にある音声をどう扱うかは、聞かせる前に弁護士に相談してください。
電話の通話を録音するのは問題ありませんか。
自分が通話の当事者である場合は、会話の録音と同じ整理になります。一方、相手の端末を操作して通話を自動録音する設定にした場合は、端末を勝手に操作したこと自体が別に問われます。何を録音したかより、そのために何をしたかで分かれると考えてください。
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法律上の注意
録音機器の選び方や設置の手順は掲載していません。この記事が扱うのは、その行為の周辺で何が問題になるかだけです。手元にある録音をどう扱うかは、相手に聞かせる前に弁護士にご確認ください。