民法第724条により、不法行為による損害賠償の請求権は、損害及び加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年で時効によって消滅します。
ただし、配偶者に対する請求には別の条文が働きます。第159条です。
3年という数字だけを見て諦めてしまう人がいるため、この記事では2つの条文の関係を整理します。
起算点は「知った時」であって、浮気があった時ではない
第724条第1号は次のように定めています。
被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき
数え始めるのは、知った時点です。
出来事があった時点ではありません。5年前の出来事であっても、それを知ったのが最近であれば、そこからの計算になり得ます。
一方、第2号には別の期間があります。
不法行為の時から二十年間行使しないとき
こちらは、知っているかどうかに関係なく進みます。
つまり、3年と20年の2つが並行して動いています。
配偶者に対しては、第159条が働く
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
第159条は次のように定めています。
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
婚姻が続いている間、配偶者に対する権利について時効は完成しません。そして離婚などで婚姻が解消しても、そこから6か月間は猶予されます。
したがって、次のように分かれます。
| 請求の相手 | 働く条文 | 期間の考え方 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 第724条 + 第159条 | 婚姻中は完成せず、解消から6か月を経過するまで猶予 |
| 相手方(配偶者以外) | 第724条のみ | 知った時から3年/不法行為の時から20年 |
第159条は夫婦間の権利についての規定なので、相手方への請求には働きません。
同じ出来事について請求する場合でも、相手によって期限が違う形になります。
「3年」を見て諦める前に確認すること
検索して3年という数字だけを見ると、もう手遅れだと感じます。
しかし実際には、次の3点で結論が変わり得ます。
- いつ知ったのか — 疑い始めた時点と、確かめた時点は違います
- 婚姻が続いているか — 続いていれば、配偶者に対しては第159条が働きます
- 誰に請求するのか — 配偶者と相手方で、期間の考え方が分かれます
この3点は、証拠が1つもない段階でも弁護士に確認できます。
調べているうちに期限が来ることはある
一方で、注意も必要です。
調査には時間がかかります。数週間から数か月単位になることもあり、その間も期間は進みます。
とくに相手方への請求を考えている場合、第159条が働かないため、期間の管理が問題になります。
そのため、調査を始める前に、いつを起算点として何年残っているのかを確認しておくほうが安全です。 期限が迫っている場合、先に時効の完成を猶予する手続きを取るという判断もあり得ます。
弁護士費用が心配な場合は、法テラスの制度を利用できるか確認してください。
順番を間違えないために
やることの順番は、次のようになります。
期限の確認 → 何を確かめるかを決める → 調査 → 請求
多くの人は2番目から始めてしまいます。しかし1番目を飛ばすと、集め終えた時点で期限が過ぎていた、という事態が起こり得ます。
調査に入る段階になったら、契約前に確認できることを読んでから相談してください。期間の見通しを聞くことが、そのまま期限の管理につながります。
よくある質問
浮気があったのは5年前です。もう無理ですか。
民法第724条第1号の3年は、損害及び加害者を知った時から数えます。浮気があった時点ではありません。5年前の出来事でも、知ったのが最近であれば、その時点からの計算になり得ます。ただし第2号により、不法行為の時から20年という別の期間もあります。具体的な起算点は弁護士にご確認ください。
夫婦のままでいるうちは、時効を気にしなくてよいのですか。
民法第159条は、夫婦の一方が他の一方に対して有する権利について、婚姻の解消の時から6か月を経過するまで時効は完成しないと定めています。ただし、これは配偶者に対する権利の話です。浮気相手に対する請求には、この条文は働きません。
相手方にも請求したい場合、期限は別ですか。
配偶者に対する請求と、相手方に対する請求は別々に扱われます。第159条は夫婦間の権利についての規定なので、相手方への請求では第724条の期間がそのまま問題になります。相手方の氏名や住所が分からない状態が続いている場合の扱いも含めて、弁護士に相談してください。
証拠を集めているうちに期限が来てしまいませんか。
その可能性はあります。だからこそ、調査を始める前の段階で、いつを起算点として何年残っているのかを弁護士に確認しておくほうが安全です。期限が迫っている場合、時効の完成を猶予する手続きを先に取るという判断もあり得ます。
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法律上の注意
時効の起算点や中断・猶予の手続きは、事情によって扱いが変わります。この記事は条文の内容を示すもので、ご自身のケースの判断ではありません。期限が近い可能性がある場合は、早めに弁護士へご相談ください。