承諾を得て共有している間は、相手の居場所が見えていても問題になりません。扱いが変わるのは、承諾がない状態で取得しているときです。
そして、相手のアカウントに別の端末からログインして見る行為は、これとはまた別の法律の問題になります。
この記事では、その3つの状態を切り分けます。判断が必要な場面は弁護士の業務のため、ここでは条文に何が書かれているかまでを扱います。
「共有している」と「取得している」は同じではない
ストーカー規制法第2条第3項第1号は、承諾を得ないで、相手が所持する装置により記録・送信される位置情報を取得する行為を挙げています。
条文が置いている軸は、承諾があるかどうかです。
アプリの種類でも、家族かどうかでもありません。
したがって、次のように分かれます。
| 状態 | 条文の軸から見ると |
|---|---|
| 双方が納得して共有を設定し、いまも続いている | 承諾がある |
| 相手の端末を操作して、共有する設定に変えた | 承諾がない |
| 導入時は合意したが、相手が取りやめたいと言った後も見ている | その時点から承諾がない |
| 相手が共有していることを忘れているだけ | 判断が分かれ得る |
3行目と4行目が、実際にはいちばん多い形です。
承諾は撤回できる
見落とされやすい点です。
一度同意したことは、ずっと同意し続けたことにはなりません。
相手が「もうやめたい」と言った、あるいは共有を解除しようとしたのに設定を戻した、という場合、そこから先は承諾がない状態として扱われる可能性があります。
「最初は本人が同意していた」という説明は、その時点までしか届きません。
相手のアカウントに入る場合は、別の法律の話になる
自分の端末から、相手のIDとパスワードを使って相手のアカウントにログインし、位置情報を見る。この形は、位置情報の問題ではなく不正アクセス禁止法の問題になります。
同法第3条が禁じているのは、電気通信回線を通じて他人の識別符号を入力し、アクセス制御機能による利用の制限を解除する行為です。警察庁の解説でも、この要件が示されています。
罰則は第11条により3年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。
同じ「位置情報を見る」でも、どこから見るかで扱う法律が変わります。
- 共有機能によって自分の端末に表示されている情報を見る → 承諾の有無が軸になる
- 相手のアカウントにログインして見る → アクセスの適否が軸になる
後者は、位置情報だけの話ではありません。ログインした先で見られるものすべてが同じ問題を抱えます。
記録が残っても、答えにならないことがある
仮に問題なく取得できた記録があったとしても、それが示すのはどこにいたかまでです。
離婚や慰謝料の話し合いで問われるのは、誰と、どういう関係にあったのかです。
滞在の記録だけでは、そこに届かないことがあります。相手が「仕事の打ち合わせだった」と説明したとき、位置の記録はそれを否定しません。
足りないのは記録の量ではなく、記録が示せる内容の種類です。
共有を止めるかどうかの決め方
いま共有が続いている状態で、どうすればよいか迷う人が多いところです。
判断の材料は1つです。相手がその共有を続けることに納得しているか。
納得していないと分かっているなら、続ける理由はありません。相手に伝わってしまうという心配は、判断の軸にはなりません。
そのうえで、確かめたいことが残るのであれば、自分で動く場合と依頼する場合で何が違うのかを先に確認してください。
よくある質問
子どもの見守りのために家族全員で共有しています。この状態は問題ですか。
全員が納得したうえで共有している状態そのものが問題になるとは考えにくいところです。論点になるのは、その共有を相手の行動を確かめる目的で使い始めた場合や、相手が取りやめたいと言ったあとも取得を続けた場合です。導入したときの合意が、いまも続いているかどうかで見てください。
相手のスマホを操作して、自分と位置を共有する設定にしました。
相手の端末を操作して設定を変えた場合、相手はその共有に同意していないことになります。承諾を得ない位置情報の取得として、ストーカー規制法第2条第3項第1号の問題になり得ます。すでに設定してしまっている場合の扱いも含めて、弁護士に相談してください。
共有をやめると、疑っていることが相手に伝わってしまいます。
共有の停止が相手に表示されるかどうかは、使っているサービスによって異なります。ただ、続けるかどうかを決める材料は、伝わるかどうかではなく、承諾がある状態かどうかです。相手に知られたくないという理由で続けている状態は、承諾がない状態と重なりやすくなります。
履歴として残っている過去の位置情報は使えますか。
その記録が何を示すかによって変わります。ある場所に滞在していた事実だけでは、誰と一緒にいたのかまでは示せないためです。加えて、取得の経緯が問われる場面もあります。手元の記録をどう扱うかは、相手に見せる前に弁護士に確認してください。
関連する記事
-
アプリの履歴は証拠になるのか|消える前提で考える必要があります
マッチングアプリやメッセージアプリの履歴が証拠として何を示せるのか、消えたらどうなるのかを整理しました。取得の方法によって扱いが変わる点もあわせて説明します。
-
別居中の交際は不貞になるのか|婚姻は続いていても評価は変わり得る
別居していても婚姻関係は続いていますが、いつ婚姻関係が破綻していたかによって評価が変わり得ます。条文に破綻の定義がないことを踏まえ、何が問われるのかを整理しました。
-
相手の勤務先や家族に伝えてよいか|真実でも名誉毀損は成立し得ます
浮気相手の勤務先や家族に事実を伝える行為が、なぜ問題になり得るのかを条文から整理しました。刑法第230条が「その事実の有無にかかわらず」と定めている意味を扱います。
法律上の注意
アプリの設定方法や、相手に気づかれずに共有を続ける手段は掲載していません。この記事が扱うのは、どこから問題になるのかだけです。ご自身のケースについての判断は弁護士にご確認ください。